一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会
発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会

そのほかの機能性

整腸作用に関する研究からはじまった乳酸菌の機能性(有効性)を探索する研究は今も幅広く行われ、新たな機能性が次々と報告されています。今後も新しい機能性が発見されていくことが予想され、乳酸菌は私たちの健康の維持・増進に様々な面でますます貢献していくことが期待されます。

潰瘍性大腸炎の症状軽減

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらん(ただれ)や潰瘍ができる炎症性腸疾患で、下痢や血便、腹痛などが症状として現れます。免疫反応の異常や腸内フローラの乱れが関与していると考えられていますが、その原因はいまだ明らかになっていません。病気の根治が難しく、QOL(生活の質)を低下させる難病であり、大腸がんの発症リスクを高めることが知られています。この潰瘍性大腸炎の増悪予防や症状軽減に、乳酸菌が役立つことが明らかになっています。

ビフィズス菌による潰瘍性大腸炎(緩解期)患者の再発抑制効果

緩解期(炎症が治まっている状態)にある潰瘍性大腸炎患者にビフィズス菌(B.ビフィダムとB.ブレーベ)を含む発酵乳を1年間飲用してもらったところ、飲用しなかった患者に比べて、長期間再発が抑えられました。
〔出典:Ishikawa H. et al., J. Am. Coll. Nutr., 22, 56-63(2003)〕

乳酸桿菌による潰瘍性大腸炎の症状軽減効果

潰瘍性大腸炎の患者に、乳酸桿菌(L.カゼイ)を1日800億個、8週間飲用してもらったところ、通常治療のみの群に比べ、潰瘍性大腸炎の症状が軽減されました。
※臨床活動度指数…下痢の回数、血便の程度、腹痛の程度などの8項目の合計値として算出したもので、スコアが高いほど症状が重いことを示す(スコア最高点 21)。
〔出典:Mitsuyama K. et al., J. Clin. Biochem. Nutr., 43, 78-81(2008)〕

過敏性腸症候群(IBS)の症状緩和

過敏性腸症候群(IBS) は、大腸に潰瘍やがんなどの異常が認められないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感を伴う便秘や下痢などの便通異常が長く繰り返される病気です。日本人の5~10人に1人がIBSと推定され、精神的ストレスが関与していると考えられていますが、原因は不明です。電車の中で急にトイレに行きたくなるなど、QOL(生活の質)を低下させるとして問題となっています。乳酸菌は、このIBSの症状緩和に関与することがわかっています。

ビフィズス菌による過敏性腸症候群(IBS)の症状軽減効果

IBS患者にビフィズス菌 (B.ブレーベ) を1日30億個以上、8週間飲用してもらったところ、プラセボ(偽薬)※群に比べ、腹痛や不快感、軟便といったIBS特有の症状スコアが低下し、IBSの症状が軽減されました。
※プラセボ…偽薬ともいう。見た目や味に違いがなく、評価対象の成分を含まないもの。
〔出典:福土 審、腸内フローラと機能性消化管障害(第17回腸内フローラシンポジウム記録集)、医薬出版、3-9 (2009)〕

肝機能の改善

肝臓にトラブルを起こす原因は様々ですが、主なものにアルコールの飲み過ぎがあります。 大量のアルコールを長期間摂取すると肝細胞に障害が生じ、肝臓の機能が低下し、肝炎から肝硬変へと病気が進行していきます。乳酸菌は、肝機能の状態を改善し、体内での炎症を抑える作用があることが明らかになっており、肝炎や肝硬変の予防につながることが期待されます。

乳酸桿菌による肝機能の改善効果

アルコール性肝硬変患者に乳酸桿菌(L.カゼイ)を400億個含む乳酸菌飲料を1日2本、2週間飲用してもらったところ、プラセボ(偽薬) 群に比べ、肝機能の状態の指標となるたんぱく質 (トランスサイレチン)の量が高まり、体内での炎症も抑制されました。肝硬変患者では腸内フローラのバランスがくずれているとの報告があり、この試験では乳酸桿菌の飲用で腸内フローラの改善も認められました。
〔出典:Koga H. et al., Hepatol. Int., 7, 767-774(2013)〕

メンタルヘルスの向上

乳酸菌にはストレスの緩和作用や、ストレスによる睡眠の質の低下を改善する作用が知られており、メンタルヘルスの向上が期待されます。

乳酸桿菌によるストレスの緩和と睡眠の質の改善効果

ストレスを受けている人に乳酸桿菌(L.ガセリ)を1日100億個、4週間飲用してもらったところ、ストレスによる不安感がやわらぎ、睡眠の質の低下が改善されました。
〔出典:Sawada D. et al., J. Funct. Foods, 31, 188-197(2017)〕

※HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale(不安・抑うつの評価に使われる質問票)
※PSQI:ピッツバーグ睡眠質問票(睡眠の質の評価に使われる質問票)

【コラム】脳腸相関

腸は「第二の脳」とも呼ばれる独自の神経ネットワークを持っており、脳からの指令がなくても独立して活動することができます。「脳腸相関」とは、脳と腸とが相互に情報を伝え合い、双方向的に影響を及ぼし合うことをいいます。
例えば多くの動物では、ストレスを感じるとお腹が痛くなり、便意をもよおします。これは脳が自律神経を介して、腸にストレスの刺激を伝えるからです。
最近では、ある種の乳酸菌を摂取すると、腸から脳へつながる自律神経を活性化してストレスを緩和し、ストレスホルモンの分泌を抑制するとの報告もあり、「脳-腸-微生物相関」という言葉も提唱されています。