一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会
発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会

免疫力の調節作用

乳酸菌は免疫力を調節し、感染症やがんに対するからだの抵抗力を高めるとともに、過剰な免疫反応を抑制し、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を抑えます。

免疫とは?

「免疫」とは自分と自分以外の異物を判別し、異物を排除して身を守る仕組みのことです。外から入ってくる異物(病原菌やウイルスなど)だけでなく、体内で生まれる異物(がん細胞など)も排除し、私たちのからだを守っています。その役割を担っているのが免疫細胞です。免疫細胞は外敵(異物)を見つけると、主に次のような方法で戦います。
①外敵の情報を、免疫システムの司令官であるヘルパーT細胞に伝える(樹状細胞、マクロファージ)
②他の免疫細胞を活性化したり、攻撃開始の指令を送る(ヘルパーT細胞)
③敵(異物)をまるごと食べる(マクロファージなど)
④がん細胞やウイルスに感染した細胞を撃退する(NK〈ナチュラルキラー〉)細胞、キラーT細胞など
⑤「抗体」をつくり、体内に侵入してきた敵や毒素などに結合して、そのはたらきを抑える(B細胞)

免疫細胞が敵を撃退する力を「免疫力」といいます。「免疫力が高い」というのは、免疫細胞の活性が高いことを意味します。④のナチュラルキラー細胞の強さを「NK活性」といい、このNK活性は加齢や生活習慣等によって大きく影響を受けることが知られており、免疫力のバロメーターとして注目されています。
一方、口から入った食べ物など生体にとって必要なものを免疫反応によって排除してしまうと不都合が生じます。そこで、食べ物など生体にとって必要なものを異物として認識せず免疫反応を起こさない「経口免疫寛容」という仕組みも知られています。この「経口免疫寛容」を花粉症や食物アレルギーの予防や治療に応用しようとする研究が進められており、ある種の乳酸菌は「経口免疫寛容」を強めることが報告されています。

腸管免疫の仕組み

食事のときに食べ物と一緒に細菌やウイルスも侵入してくるため、腸は体内でもっとも危険にさらされている場所といえます。そのため、腸には体全体の半数以上の免疫細胞が配置され、生体防御の最前線としてはたらいています。このようなことから、腸は「人体最大の免疫器官」といわれます。
腸管には病原菌やウイルスなどの外敵と免疫細胞が出会う場となるパイエル板などのリンパ組織があり、 腸独自の免疫組織である腸管付属リンパ組織(GALT)が発達しています。
GALTを形成するパイエル板の上皮細胞にはM細胞と呼ばれる外敵を取り込む細胞が点在し、M細胞から取り込まれた外敵はGALT内の免疫細胞により排除されます。
一方、腸内に到達した乳酸菌もM細胞から体内に取り込まれ、免疫細胞を刺激することにより、免疫力の調節作用を発揮すると考えられています。

感染症の予防

乳酸桿菌による風邪の予防と免疫機能の維持効果

激しい運動をするスポーツ選手に乳酸桿菌(L.カゼイ)を65億個含む乳酸菌飲料を1日2本、16週間飲用してもらったところ、上気道感染症(いわゆる風邪)の発症が抑制されました。また、唾液中のIgA抗体の濃度はプラセボ(偽薬)※群では低下しましたが、乳酸桿菌飲用群では一定のレベルに維持されました。IgA抗体はB細胞がつくる抗体の一つで、唾液や気道粘膜など外界と接触する場所に多く存在し、細菌やウイルスの体内の侵入を防いでいます。
※プラセボ…偽薬ともいう。見た目や味に違いがなく、評価対象の成分を含まないもの。
〔出典:Gleeson M. et al., Int. J. Sport Nutr. Exe., 21, 55-64(2011)〕

乳酸球菌による風邪・インフルエンザの予防

健康な成人に乳酸球菌(Lc.ラクティス)で発酵させた発酵乳(乳酸球菌を1,000億個含む) を10週間飲用してもらったところ、飲用期間中の風邪・インフルエンザの累積罹患者数はプラセボ(偽薬)群が14名であったのに対して、乳酸球菌飲用群は7名と抑えられ、「咳・のどの痛み・熱っぽさ」等の風邪・インフルエンザ様症状も軽減されました。
〔出典:Sugimura T. et al., Brit. J. Nutr., 114, 727-733(2015)〕

発がんリスクの低減

乳酸菌は、体内に発生した変異原性物質などの発がん物質を吸着して便と一緒に体の外に排出するとともに、NK活性などの免疫力を高めることにより、発がんのリスクを低減します。

乳酸桿菌によるNK活性の上昇効果

健康な成人に乳酸桿菌(L.カゼイ)を400億個含む乳酸菌飲料を1日1本、3週間飲用してもらったところ、NK活性の上昇が認められました。また、このNK活性上昇の程度は、乳酸桿菌飲用前のNK活性が低い人ほど顕著でした。
〔出典:Nagao F. et al., Biosci. Biotech. Bioch., 64, 2706-2708(2000)〕

乳酸桿菌による表在性膀胱がんの再発抑制効果

表在性膀胱がんの切除手術をした患者に、乳酸桿菌(L.カゼイ)を1日300億個飲用してもらったところ、飲用していない患者と比べて再発率の低下が認められました。
〔出典:Aso Y. et al., Eur. Urol., 27, 104-109(1995)〕

乳酸菌飲料の習慣的飲用による膀胱がん発症リスクの低減

過去10~15年間の乳酸菌飲料の飲用状況を聞き、乳酸菌飲料と膀胱がんの発症リスクとの関係を調べたところ、習慣的に乳酸菌飲料を飲んでいた人は、膀胱がんの発症リスクが低いことが認められました。同時に調査した喫煙習慣のある人の膀胱がん発症リスクは、喫煙習慣のない人の約1.6倍でした。
〔出典:Ohashi Y. et al., Urol. Int., 68, 273-280(2002)〕

乳酸桿菌による大腸がん発症リスクの低減効果

大腸ポリープの切除手術をした患者に、乳酸桿菌(L.カゼイ)を1日300億個飲用してもらい、切除から2年目、4年目のポリープの再発を調べたところ、乳酸桿菌群は非飲用群に比べ、がん化しやすいポリープの発生リスクが4年目で35%低くなりました。
〔出典:Ishikawa H. et al., Int. J. Cancer, 116, 762-767(2005)〕

乳酸桿菌による乳がん発症リスクの低減効果

乳がん罹患者と非罹患者において過去の生活習慣を調査し、乳酸桿菌(L.カゼイ)の摂取と乳がん発症の関連を調べたところ、乳酸桿菌を含む発酵乳あるいは乳酸菌飲料を週4回以上継続摂取することで、週4回未満のときを1とした場合に対して乳がんの発症リスクが35%低減しました。
〔出典:Toi M. et al., Curr. Nutr. Food Sci., 9, 194-200(2013)〕

過剰な免疫反応の抑制

免疫細胞の一種であるヘルパーT細胞は、他の免疫細胞に指令を送り、免疫細胞を活性化させる司令塔の役割を担っています。ヘルパーT細胞にはTh1細胞とTh2細胞の2種類があり、この両者のバランスがくずれると免疫が過剰反応を起こしてアレルギーを起こしやすくなります。乳酸菌は、これらの免疫細胞のバランスを整えることで、過剰な免疫反応を抑えるはたらきをしています。

ビフィズス菌による花粉症の自覚症状の緩和効果

花粉症患者に、スギ花粉が飛び始める約1カ月前から、ビフィズス菌 (B.ロンガム)を1日1,000億個またはプラセボ (偽薬)を13週間飲用してもらったところ、ビフィズス菌飲用群では花粉症の自覚症状が緩和されました。
〔出典:Xiao J. Z. et al., Clin. Exp. Allergy, 36, 1425-1435(2006)〕

乳酸桿菌による花粉症の症状軽減効果

花粉症患者に、スギ花粉シーズンに2種類の乳酸桿菌(L.ラムノーサスとL.ガセリ)で発酵させた発酵乳を1日110g、10週間摂取してもらったところ、プラセボ(偽薬)群に比べ、臨床的な判定と自覚症状の両方で鼻閉症状に改善が認められました。
〔出典:Kawase M. et al., Int. J. Food Microbiol., 128, 429-434(2009)〕


ビフィズス菌+オリゴ糖によるアトピー性皮膚炎、喘息様症状の軽減効果

アトピー性皮膚炎の乳児にビフィズス菌 (B. ブレーベ) とオリゴ糖を12週間投与したところ、プラセボ(偽薬) 群に比べ、アトピー性皮膚炎の症状が軽減しました。また、摂取1年後の喘息様症状を調べたところ、喘息様症状が軽減しました。
〔出典:van der Aa L. B. et al., Clin. Exp. Allergy, 40, 795-804(2010)、van der Aa L. B. et al., Allergy, 66, 170-177(2011)〕