久保田 康史 第33回コーデックス委員会総会報告

第33回コーデックス委員会総会報告

 2010年7月5日から7月9日の間開催された第33回コーデックス委員会(CAC)総会で、「乳製品乳酸菌飲料のコーデックス規格案(はっ酵乳を基とした飲料に関するコーデックス発酵乳規格(CODEX STN 243-2003)の修正案);ステップ8」が最終採択され、製品のはっ酵乳の最低含量を40%とすることで最終決着すると共に、現行コーデックスはっ酵乳規格への挿入が決定されました。乳製品乳酸菌飲料の国際規格化は、わが国の提案による初の国際的な成果であり、また当協会が長年にわたり設定を望んできたものでもあります。まさに二重の喜びと言えましょう。以下、スイス・ジュネーブで開催された総会に出席しましたので、報告します。

1. はじめに

 (社)全国はっ酵乳乳酸菌飲料協会森田邦雄専務理事と同行し、第33回コーデックス委員会総会にオブザーバー資格で出席しました。2010年2月に乳・乳製品部会(CCMMP)にて合意された「はっ酵乳を基とした飲料(Drinks based on Fermented Milk)」修正規格案(ステップ8)の国際規格最終採択に係わる、各国代表団の意見、修正動議、それらに対する委員会執行部の対応を遂次傍聴・確認し、わが国初の提案による国際食品規格成立までの審議経過を確認しました。また、総会最終日に配布されたコーデックス委員会事務局作成による報告書(案)の記載内容を確認しました。

2.審議の要点

 審議の要点は、乳・乳製品部会で製品のはっ酵乳の最低含量を40%とする全体合意に対し、乳製品は乳成分50%以上でなければならないとする考えや、現在の国内法で定めた規格よりも乳成分含量の低い製品の輸入が国内製品への圧迫要因になる等の理由で50%以上を主張する国が、総会でどのような反対・修正意見を展開し、それに対して委員会執行部がどのような裁定を下すかにありました。但し、「はっ酵乳を基とした飲料」自体を現行コーデックスはっ酵乳規格へ挿入することに反対する国はなく、議論は専ら最低含量を40%とするか50%とするかに終始しました。 これまでの経過については、乳酸菌ニュース2010春季号「乳製品乳酸菌飲料のコーデックス規格化の現状」にて久間嘉晴氏が詳細に解説しているので、参考にしてください。

3.審議経過

7月5日(月) 総会初日
 はやる気持ちを抑えて受付を終え、議場後方のオブザーバー席に座りました。今回の国際規格成立に陰になり日向になり尽力されてきた日本政府代表団や関係諸氏への挨拶を行い、開会を待ちました。開会セレモニーのようなものはなく、事務連絡の後、議長団の挨拶と共に議事がテンポも速く粛々と進められ、午前中には早くも「はっ酵乳を基とした飲料」修正規格案の審議が始まりました。周辺ではピンと張り詰めた緊張が走りました。
 議長の審議開始の合図と共に、日本政府代表団団長の厚生労働省医薬食品局食品安全部石塚部長(当時)が、トップバッターに立ち、日本は製品のはっ酵乳の最低含量を40%とする部会案を強く支持すると発言し、日本政府発案の国際規格成立に並々ならぬ決意を示されました。
 これに対し、40%を支持する国(インドネシア・マレーシア・タイ・リビア・チュニジア・イラン・トルコ)、50%を主張する国(コロンビア・ウルグアイ・ブラジル)が交互に発言を行い、予断を 許さぬ状況が続きました。
 議論が煮詰まってきたところで、委員会議長は、乳・乳製品部会の議長国を務めたニュージーランド代表に部会の審議経過について報告するよう求め、これを受けてニュージーランド代表が部会の大多数の国は40%を支持している旨を報告したのを機に、すかさず、委員会議長は部会案の最終採択を宣言しました。あっと言う間の出来事でしたが、国境を越えて国際規格成立に尽力されてきた関係者に大きな笑顔が瞬く間に広がったことは印象的でした。

議案審議風景▲議案審議風景

7月5日(月) 総会初日
 コーデックス委員会事務局作成による英語版報告書(案)(他にフランス語・スペイン語・中国語・アラビア語に翻訳されている)を受け取り、早速文案を確認、開会を待ちました。
 審議が始まりましたが、前回とは異なり異議もなく承認され、安堵しました。晴れてわが国初の提案による国際規格が登録された次第です。

「はっ酵乳を基とした飲料」(step8)最終採択宣言▲「はっ酵乳を基とした飲料」(step8)最終採択宣言

4.報告書の記載内容

 以下、「はっ酵乳を基とした飲料」の最終採択に関する報告書の日本語訳です。筆者が仮 訳したものなので公式のものではありません。原文はコーデックス委員会ホームページ
 http://www.codexalimentarius.net/web/archives.jsp?lang=en
で確認できます。

はっ酵乳を基とした飲料を追加するはっ酵乳コーデックス規格(CODEX STAN 243-2003)の修正(案)

29. 委員会は、多くの代表団が乳・乳製品部会(CCMMP)で長時間・広範囲に亘り議論 されてきた結論である修正案の採択を支持したことを記す。ある代表団※1は、はっ酵乳を 基とした飲料のはっ酵乳最低含量を40%とすることは、消費者・食品事業者双方にとって折り合いが良いと述べた。コロンビア代表団は、−ウルグアイはこれを支持−乳成分を最低50%とすることは、これらの種類の製品には不可欠との見解を示した。

30. また、委員会は、はっ酵乳を基とした飲料に関する乳製品の最低含量とその他の混合物の議論が、CCMMP部会において過去7年間広範囲に亘って考慮され、議論されてきたこと、また、最終部会において、幾人かの委員は留保したものの、はっ酵乳の最低含量を40%とすることで合意されたことを記す。

31. 委員会は、CCMMPにより提案され、また適切な委員会によりSTEP 8 で認証された はっ酵乳を基とした飲料を追加するはっ酵乳コーデックス規格の修正(案)を採択した。

32. 委員会は、また、「doogh」※2や「ayran」※3のような製品が、それらの特殊な配合上の 要求性からはっ酵乳基準に合致しないことを鑑み、他の適切な部会(すなわち、CCNEA※4及びCCEURO※5)に、それらの製品に関する地域規格を作成すべく、関心のあるメンバーに、これらの委員会においてそれらの製品の地域規格を作成するための新規作業を行うべきか検討するよう、要請した。

以下の注は筆者が付した。

※1 日本代表団のこと(発言者;厚生労働省食品安全部 石塚部長)

※2 ヨーグルトに水と塩を混ぜた飲料(イラン)

※3 ヨーグルトに水と塩を混ぜた飲料(トルコ)

※4 アフリカ地域調整部会

※5 ヨーロッパ地域調整部会

5.おわりに

 今回、わが国で開発され長年に亘って海外で市場展開されてきた乳製品乳酸菌飲料が、「はっ酵乳を基とした飲料」として国際規格化されたことは、公式に国際的な食品カテゴリーとして認知を受けたこと、また商品規格が明確化されたことでより公正な国際間競争・貿易確保の道筋が付いたという点で大きな成果と言えましょう。同行した森田専務は、帰国後、今回の総会の成果を振り返り、「はっ酵乳・乳酸菌飲料の健康へのかかわりを訴え、消費拡大していくことは、酪農乳業全体のパイを拡げることにもなる。国際規格の成立は、消費拡大につなげるよいキッカケになる。日本政府の尽力、国際酪農連盟日本国内委員会の協力に感謝する。」とコメントを発表し、国内市場活性化への期待を表明しております。
 長年、「はっ酵乳を基とした飲料」の国際規格化に尽力されていた当協会会員企業の皆様にも祝意を申し述べ、報告を終えたいと思います。



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