サッカー選手の間食としても、
ヨーグルトは理想的な食品。

有限会社 橋本玲子ダイエットコンサルテーションズ
代表取締役 管理栄養士 橋本 玲子

Jリーグの横浜F・マリノスをはじめ、実業団や大学生、高校生などのスポーツチームへの栄養サポートを行っている橋本玲子ダイエットコンサルテーションズ。他にも、栄養士やフードコーディネーターなど食のプロに向けて海外の最新情報を発信したり、食品会社・流通企業、マスメディアなどにも食トレンドの情報を伝えるなど、多方面にわたって活躍されています。そんな橋本先生に、プロサッカー選手の栄養管理で特に留意されているポイントや、乳製品・ヨーグルトの摂取意義などについてお話を伺いました。

疲労回復、ケガの予防・早期回復、スタミナアップが栄養サポートの中心

■横浜F・マリノスに対して、どのような栄養サポートをされているのでしょうか?
●橋本 他の学生やアマチュアチームと違うところは、選手に個別対応していることです。現在、チームには30名以上の契約選手がいるのですが、既婚者もいれば一人暮らししている人もいますし、寮で生活している人もいます。状況が違えば栄養アドバイスの内容も全く変わりますから、個別でサポートせざるを得ません。
 プロの場合、結果を残さなければならない世界ですから、精神的にも肉体的にも極限まで追い込んで戦っています。ですからサポートも、疲労回復やケガの予防と回復、スタミナアップが中心になります。また、食事は大きな精神的な支えにもなっていると思いますね。

■具体的なサポート方法についてお教えください。
●橋本 1年間をトレーニング期(準備期)、調整期(試合期)、移行期(休養期)の3つに分け、期分けごとにコーチと相談しながらサポート内容を検討します。
 準備期は合宿の時期で非常に運動量が多いので、筋肉をつけたり余分な脂肪を絞ったりすることが目的になります。たんぱく質やビタミン、鉄やカルシウムなどのミネラルを十分に摂れるような栄養教育やメニューづくりを行います。
 試合期は疲労回復とケガの回復のための食事が中心です。90分間走り続けるための主なエネルギー源は炭水化物ですし、炭水化物が不足すると疲労回復も遅れてしまいます。ですから普段からご飯を丼で2杯、最低限1杯は食べるようにお話ししています。また、骨折の予防や骨の強化も必要ですから、カルシウムは常に摂取しなければならない栄養素です。鉄分はスタミナ維持に関わる栄養素ですが、比較的摂りにくいので鉄不足には非常に注意します。
 休養期のポイントは体重増加の抑制です。サッカー選手、特にマリノスの選手は体脂肪率を厳しく管理されており、10%を超えると栄養指導を受けるようになっています。ですから選手たちも日頃からサラダのドレッシングはノンオイル、牛乳も低脂肪牛乳以外は飲みません。

■合宿先や遠征先のホテルの食事メニューも、かなり細かく橋本さんが指示されるのですか?
●橋本 そうですね。メニューの雛形を作って合宿先のシェフに渡しています。例えば主食はご飯とパスタ、パンを日替わりで出してほしい、主菜の肉料理はシンプルにグリルしたものと、中華風に炒めたものの2種類を用意してほしいなどというように、品数と調理方法に関する要望を伝えます。特に試合前はホテルでバイキングスタイルで食べますので、メニューにはかなり気をつかいます。

選手個々の食習慣をチェックし、状況に応じてアドバイス

■個別対応ということは、食事チェックなども行われているのですか?
●橋本 シーズンの初めと夏(夏ばて予防)、そして冬(カゼ予防)の3回にわたってチェックシートを渡して食習慣をチェックし、個別にコメントをお返しします。その他、コーチやトレーナーからの要望があれば、体調の悪い選手に対してカウンセリングを行うこともあります。
 チェックを行うと、おおよその傾向がつかめてきます。野菜が嫌い、乳製品を摂らないなど、食事が偏っている人は年間を通してみるとケガが多かったりカゼをひきやすかったりします。そのような選手には、その時期に症状を和らげるような個別のアドバイスをするようにしています。好き嫌いがあっても活躍している選手がいるじゃないかと言う人もいますが、長い目で見ると、しっかり運動と栄養、休養をコントロールできている選手の方が現役生活を長く続けられるようですね。
 ケガをした場合のサポートも非常に大切です。1日でも早く復帰してもらわなければチームも困りますから、リハビリ期間中は食事のサポートにたいへん時間をかけます。練習量が減ると、太るのを気にしている選手は自ら食事量を制限してしまいます。そうなるとケガの回復が遅れてしまうので、食事とサプリメントの両方から対応することになります。

■選手の奥さま方などにも食事や栄養についてお話しする機会はあるのですか?
●橋本 はい。セミナーや料理講習会を年に1回開催しています。また、月に1回、会報誌を奥さま方に発行し、季節等に合わせたメニュー等の情報を提供しています。寮で暮らしている選手にも、ワンポイントアドバイスを載せた資料を食卓に置くなどして、栄養や食事に留意してもらうようにしています。



クラブチームに所属する子供たちとその保護者への栄養サポート

■ユースや、その下のクラブチームにも栄養サポートをされているのでしょうか?
●橋本 マリノスの場合、高校生選抜のユース、中学生選抜のジュニアユース、小学生選抜のプライマリーがあります。昨年、その保護者の方を対象としたセミナーを実施して200名近い方々が参加されました。お母さま方は、どうしてもトップ選手がやっていること、例えばサプリメントの摂取などを真似ようとするのですが、育ち盛りの子供たちとトップ選手では必要な栄養は違いますから、その違いと、本当に健康的に摂らなければいけない食事の量などを説明しています。
 バランスのとれた食事とはどのようなものかが正しく理解されていないことが多いので、まず1日3食しっかり食べること、小学生だったら間食も大切だということ、主食、主菜、副菜、汁物を揃えることの重要性といった話から始めます。

■食事に関する子供たちの問題点として、何か気づかれていることはありますか?
●橋本 学校の授業が終わってから2時間程度かけて練習場に通っている人も少なくないので、練習終了後に帰宅し、それから夕食を食べるとなると食事時間が夜の11時、12時頃になってしまいます。一番の育ち盛りにこれでは問題ですから、昨年から高校生の場合は週に2回(今年からは週に4回)、チームで夕食を用意し、食べてから帰宅してもらうようにしました。やはり疲労回復を早めるには、練習が終わってからすぐに食べるということが非常に大切です。

間食として、ヨーグルトを最優先で勧める

■子供たちも含めて、サッカー選手にヨーグルトの摂取を勧めていますか?
●橋本 ケガの予防と早期回復を考えると、乳製品の摂取は不可欠です。また、ストレスを和らげたり免疫力を高める上でも勧められますね。合宿でも、メニューの飲み物に必ず牛乳を入れていますし、デザートとしてヨーグルトを出しています。スポーツ選手の場合、最低限、1日に牛乳をコップ3杯は飲んでもらうようにガイドラインを示しています。また、ヨーグルトも2カップ程度は食べるほうがいいという話もします。トップ選手もユースたちも非常に牛乳とヨーグルトを愛用していますね。
  サッカー選手の場合、試合の当日では3,500kcal程度のエネルギーが必要になりますが、体脂肪率を厳しく管理している関係上、食べる量に神経質になってなかなかそれを満たすことは困難です。そこで間食が大切になります。おやつは何がいいかと選手に聞かれた際、真っ先にヨーグルトを勧めますし、さらにフルーツを加えれば最高にバランスがよくなると伝えています。

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