中学・高校生の食生活と健康状況

女子栄養大学 栄養生理学研究室
助教授 上西一弘

子どもたちの肥満や食生活の乱れが問題になっています。また「キレる」といった心の問題も食生活と関係があるのではないかと言われます。こうした子どもたちの食生活の現状を調べるために、女子栄養大学の上西一弘先生らは、平成11年から中高生を対象に食生活と健康に関する大規模な調査を実施しています。今、子どもたちの食生活には何が起きているのか。その研究の概要をご紹介します。

朝食の欠食と夕食時間の乱れが目立つ

■先生が行われている中高生を対象とした食生活の研究とは、どのようなものなのでしょう?

●平成11年から始めた調査でして、東京・埼玉・茨城・長野の中高生のべ約6000人を対象に、食と運動などのライフスタイルと身体状況を調査しています。平成13年までは全国牛乳普及協会にご協力いただき、現在も継続して実施しています。

 中高一貫校も対象に入っているので、中学入学から高校卒業までの6年間を追跡して調査できることが特徴です。今まではある時点での横断的な調査はありましたが、このような追跡調査は日本にはなかったと思います。ちょうど今年が調査開始から6年目になりますので、その結果が出せるのではないかと期待しています。

■調査によって、現在の中高生の食生活にはどのような傾向が見えてきましたか?

●やはり中高生の一部には朝食を食べない生徒が増えてきています。中学生では約3%、高校生では約10%が「ほとんど食べない」と答えており、「週に2〜3日食べない」まで含めると10〜20%の生徒に朝食の欠食が見られます。

 また、夕食時間が乱れている生徒も多いですね。これは塾や習い事に通う生徒が増えたことと関係していると考えられます。学校が終わってすぐ塾に行き、9時、10時に帰ってきてから夕食を食べる。父親世代に起きていることと同じ問題が子どもにも起きているわけです。

 食事調査では、たんぱく質と脂質が摂取過剰ぎみで、全体的に野菜不足が目立ちました。またカルシウム不足や、女子では鉄の摂取不足も見られます。中学では学校給食の牛乳が重要なカルシウム源となっていると言えますが、全体的にこの年代のカルシウム所要量に比べて200〜300mg不足しています。



女子生徒には「隠れ肥満」が多い

■身体状況はいかがでしたか?

●男子生徒の場合、BMI、体脂肪率(BF%)のいずれを見ても肥満傾向の生徒は5〜10%でした。一方、女子生徒の場合はBMIで判断した場合の肥満傾向児の出現率は5%前後ですが、体脂肪率30%以上の人が10〜20%います。女子の場合は見かけは細いのに体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ肥満」が多い傾向にありますね。

 骨量を調べると、平均すると比較的良い傾向にあります。ただし、体脂肪率にも言えることですが、良い人と悪い人の差が大きいですね。骨折歴も調査したところ、今までに骨折したことのある人の割合は中学生男子で22.9%、中学生女子で17.5%、高校生男子で31.6%、高校生女子で20.3%でした。過去1年間に骨折したことのある人も男子では10%程度いました。これは非常に驚きでしたね。骨量と骨折歴にはほとんど相関関係がありませんでしたので、恐らく筋肉量が少ないことや、身のこなし方などの問題が大きいのではないかと考えられます。

 その他の身体状況としては、女子に貧血の予備軍が多いことが特徴的でした。中学1年ですとほとんど男女差がないのですが、学年が上がるに従って男子生徒にはほとんど貧血が見られなくなるのに対し、女子では非常に増えていきます。

 体調不良に関する質問として下表に挙げた17項目の不定愁訴に該当するものを答えてもらったのですが、「朝なかなか起きられない」、「立ちくらみがすることがある」、「体がだるいことがある」、「目が疲れる」、「疲れやすい」、「イライラすることがある」などの訴えが多く見られました。

牛乳をよく摂取する生徒ほど身体状況は良好

■牛乳摂取と身体状況の関係についても調査されたようですが…?

●牛乳の摂取量と体重、身長には特に関係は見られませんでしたが、体脂肪率は牛乳の摂取量が多いほど低い傾向にありました。生徒の中には「牛乳は太る」と考えている人もいましたが、逆の結果が出ているわけです。生徒に聞くと、「牛乳を飲んでも太らないなら飲む」という声もありました。不定愁訴や排便状況でも、牛乳の摂取量が多いほど良好な結果が出ています。

■それは牛乳の直接的な効果なのでしょうか?

●乳の成分が直接関係しているのではないと思います。牛乳を飲むということは、健康に対する意識が高い、あるいは食生活が良好であるということを示すと言えますから、それが身体状況に反映しているのではないかと考えられます。牛乳に限らず、ヨーグルトで調べても同様の結果が出るのではないでしょうか。

 しかし、ヨーグルトの摂取状況を見ると、中学生では「ほとんど食べない」という人が半数ほどいます。ヨーグルトがブームになっていますが、まだ子どもたちまでには浸透してはいないようです。

■親の意識が子どもの食生活に大きく反映していそうですね。

●いろいろな食品がある中で牛乳やヨーグルトを選ぶということは、健康を考えているか、あるいはそのような習慣が小さな頃から身についているということだと思います。親の影響は大でしょうね。別の機関による調査ですが、朝食を食べない理由として母親が作らない、あるいは食べないことが大きな割合を占めているという報告があります。牛乳1杯、あるいはヨーグルト1個でも朝食べるようにするといいのですが、それすらできない子どもが多いのです。コンビニやファーストフードを利用するとき、どのような食品を組み合わせればいいのかというような知識を、子どもはもちろんですが、親にも啓蒙することが、現在、一番の課題だと思います。

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