身体を動かしながら行う「食育」は
子どもたちに大好評

管理栄養士・健康運動指導士 古旗 照美

管理栄養士と健康運動指導士の資格を持つ古旗さんは、静岡を拠点に、プロスポーツ選手やトップ選手、指導者に対するスポーツ栄養の指導から、保育園や小学校の子どもたちに対する食育まで、多彩な活動を行っています。今回は、「食育アドベンチャー」という、身体を動かしながら食事や栄養のことを学ぶ独自の指導法を中心に、その活動についてお話をうかがいました。

スポーツ栄養のベースとしても「食育」は重要

■まず、古旗さんが行われているお仕事の概要についてお教えいただけますか。
●大きく分けて「スポーツ栄養」と「食育」の2つを中心に取り組んでいます。「スポーツ栄養」ですと、プロやトップレベルの選手の栄養サポートということで、食事の提供やカウンセリング、選手の奥さまやお母さまなどへのメニュー提案などを行っています。また、学生選手に対しては、チームに出向いて講演を行ったり、保護者向けにお話をしたりします。指導者にスポーツ栄養の理解を深めていただくためのセミナーなども行います。
もう一つの柱が「食育」です。これはスポーツ栄養と切り離されたものではなく、そのベースを支える基本だと思います。これも子どもたちに指導するだけでなく、学校の先生方や栄養士の方を対象とした講演やワークショップなども行っています。

「食育アドベンチャー」で楽しみながら知識を伝える

■食育について、具体的な内容をお教え下さい。
●国体での日本体育協会のブース、スポーツクラブ、学校や保育園など、様々な場をお借りして食育を行っているのですが、そのいずれでも基本となるのは「食育アドベンチャー」による食・栄養教育です。
「食育アドベンチャー」というのは私が考案したものなのですが、簡単に言えば身体を動かしながら行う食育です。頭で覚えた知識は、そのときは何となくわかったような気になりますが、インパクトが弱いために結構忘れてしまったりします。ところが、例えば水泳を小さな頃に習ったことがある人は何十年経っても泳げるように、身体で覚えたことはいつまでも染み付いているものです。そのように、身体を使って遊びながら、食べることの楽しさや、正しい知識を伝えることが「食育アドベンチャー」の基本的な考え方です。

■具体的には、どのような方法で行っているのでしょうか。
●国体の開催期間中に、日本体育協会のイベントブースで行った「食育アドベンチャー」を例にご説明しましょう。
まず、食べることはなぜ大切かということを伝えるために、食べ方の切り口からではなく、排泄物、つまりウンチの話を子どもたちにします。元気なときに出るウンチのことなどを最初に伝え、その後でいくつかのクイズを出します。そのクイズも、参加者が一人で考えて一人で答えるのではつまらないので、チーム対抗戦にします。例えば100人の子どもたちがいたら、20人ずつ5チームに分けて行うわけです。
「元気なバナナウンチが出るためには、1日3回食事を摂った方がいいのか、それとも2回でもボリュームがたっぷりあれば問題ないのか」というようなクイズを出し、チームで考えてもらって答えを決めます。
答えが書かれたボールが前方に用意してあるので、そのボールを代表者が取りに行き、取ってきたボールを、今度はチームで順送球という形で後ろに回していきます。それで一番早かったチームに1点というようにポイントを与えていくわけです。4問のクイズが終わり、一番速くて正解率が高かったチームが優勝ということになります。このようにチーム対抗戦にしてゲーム性を持たせると、子どもたちはとても盛り上がります。

キャラクターを使うと、子どもたちの関心度がアップ

■ゲームに盛り込む話の内容としては、どのようなものがあるのですか。
●先ほどの国体における事例ではウンチの話を例に挙げましたが、私は食育の基本として「3食しっかり食べること」、「3色摂ること」、「快食・快眠・快便の3つの快」の3つの要素が重要だと考えています。
そのうちの「3色摂ること」の3色とは、赤、黄、緑の食品群を揃えることを意味します。これも、単に話をするだけではつまらないので、3色を表す3つのキャラクターを考え、「ニュートリオ」と名づけてぬいぐるみをつくりました。英語で栄養は“ニュートリション”と言いますね。それが3つだから「ニュートリオ」として、それぞれ「プロレッド」、「カーボイエロー」、「ビタグリーン」と名づけました。
「プロレッド」はたんぱく質のプロテインをもじったもので、筋肉の赤い色や、血液の赤、力のイメージも意味します。「カーボイエロー」は炭水化物のカーボハイドレート。お米の黄色とエネルギーのイメージである黄色をひっかけたものです。そして「ビタグリーン」はビタミンと、緑色の野菜をイメージしています。

■どのような形で、このキャラクターを使うのでしょうか。
●例えば、お菓子を食べるとき、その後にご飯が食べられなくなってはいけないから、「量を決めて食べようね」という話をするのですが、そのとき、「おかずも好きなものを好きなだけ食べてはいけないから、食べ方を覚えようね」と言って、このキャラクターを見せたりします。また、ウンチの話でも、どうしてウサギさんのようなコロコロウンチが出てしまったのかということを「野菜やご飯の量が足りないからだよ」とキャラクターを見せて説明します。
保育園や小学校などにこのぬいぐるみを持っていくと、子どもたちは、何か楽しそうなことが起こるのではないかとすぐに寄って来てくれます。また、子どもたちはこのようなキャラクターのイメージや内容をとてもよく覚えますから、その意味でもとても効果的だと思います。

糖質とたんぱく質が一緒に摂れるからスポーツ栄養でもヨーグルトは理想的

■スポーツクラブでの食育も行っておられますね。

●水泳教室と「食育アドベンチャー」を合体させたような形で、週に1回、3〜4カ月を1クールで行っています。先ほどのようなゲームをプールの中で行うのですが、水にもぐれなかった子も自然ともぐれるようになるんですね。また、運動が苦手で、普通の水泳教室で挫折してしまった子どもでも、遊びながら身体を動かせるので通うのが楽しくなるようです。実際に、運動が苦手で太めだったのに6カ月間参加したら体重が4kg減った子どももいます。その子の場合は、標準体重になったことから全ての面で自信がつき、今は普通のスイミングスクールに通っています。


■3〜4ヶ月の教室であれば、食事や栄養について、いろいろな話ができますね。
●はい。3色食べようという話や、ウンチの話、おやつの摂り方、食べ物が身体の中でどのような働きをし、どのように消化吸収されるのか、あるいは旬の食材の話などもします。

■牛乳や乳製品についてはいかがですか。
●私が関わっている子どもたちは成長期の子どもたちが多いので、骨を丈夫にするためにもたんぱく質やカルシウムの摂取はとても重要です。ですから、牛乳は必ず飲もうと指導します。スポーツ栄養の面で言うと、1食に対して必ずコップ1杯、1日3杯は摂る。特別な運動をしていない子も、成長期の場合は、大人よりカルシウムが必要ですから牛乳・乳製品は必ず摂るようにお話ししますね。
特にスポーツ栄養で見ると、糖質とたんぱく質を一緒に摂ると筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンの回復が早いんですね。飲むヨーグルトなどは糖分もたんぱく質も入っていますので、とても有用だと思います。

※「食育アドベンチャー」および「ニュートリオ」は、登録商標申請中です。
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