「食育」の推進に対する国としての取り組みと諸施策の実施状況

田中 弘之 内閣府食育推進室 参事官補佐 田中 弘之

日本の「食」は今、危機的な状況にあり、国を挙げてその対策に取り組まなければならないという理念のもとに、平成17年6月、第162回国会で「食育基本法」が成立し、同年7月から施行されました。さらにこの「食育基本法」に基づき、平成18年3月には、平成18年度から22年度までの5年間を対象とした「食育推進基本計画」が策定されました。これらの政策の背景にある考え方とはどのようなものか、そして具体的にどのような施策が実施されているのかを、内閣府食育推進室 参事官補佐の田中弘之さんにお聞きしました。


関係府省、地方自治体、関係団体などが一体となって「食育」を推進する


■最近、メタボリックシンドロームが非常に注目されていますが、食事との関連が大きいのでしょうか。
 現在の日本の「食」をめぐる状況は非常に危機的な状況を迎えています。「食」の大切さに対する意識が希薄になり、健全な食生活が失われつつあります。また、「食」に関する情報が氾濫し、情報の受け手である国民が「食」に関する正しい情報を適切に選別し活用することが困難な状況も見受けられます。
このような問題は、国民の健康にも反映されています。例えば脂質の摂りすぎや野菜の摂取不足、朝食の欠食に代表されるような栄養の偏りや食習慣の乱れが子どもも含めて問題になっています。さらにこれらに起因する肥満や生活習慣病の増加なども見過ごせません。一方で、主に女性の間では痩身志向、つまり痩せすぎという問題も生じています。それと同時に、BSE問題や食品の虚偽表示などに代表される、食品に対する「安全・安心」の回復も重要な課題となっています。
これらの問題点を持つ食生活については、それぞれ内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省などが所管し、一定の成果をあげてきましたが、さらに効果的に行う国民運動として取り組んでいくことが必要です。
 「食育基本法」によって、食育推進会議が設置されるなど、関係各府省が実施する食育に関する施策の連携を図り、政府として一体的に取り組む体制が整えられました。国は、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食育基本法に基づき「食育推進基本計画」を策定しました。また、地方公共団体は、食育推進会議を設置することが可能となり、国の「食育推進基本計画」を基本として「都道府県食育推進計画」あるい「市町村食育推進計画」の作成を求められています。
 さらに、教育や保育、保健等の関係団体や、農林漁業の関係団体、食品の製造、加工、流通、販売、調理等の関係団体、料理教室など食に関わる活動を行う関係団体、様々なボランティア団体などでも食育推進運動が行われていますが、このような団体と一体的な活動が展開できるよう、全国的な連携体制を目指しています(図1)。

食育推進体制


■「食育基本法」でいう「食育」とはどのようなものを指すのでしょうか。
 「食育」そのものの定義は法律で特に示しているわけではありませんが、「食育」という概念は明治時代からあります。その言葉を借りると、食育とは「生きる上での基本であって、教育の三本柱である知育、徳育および体育の基礎となるべきもの」です。もう少し具体的に説明すると、健全な食生活を実践としての単なる食生活の改善にとどまらず、それに加えて「食」に対して感謝の念を持ち、「食」への理解を深めることや、伝統あるすぐれた食文化の継承、地域の特性を活かした食生活への配慮などが、「食育基本法」の理念に盛りこまれています。


数値目標や具体的な施策などをまとめた「食育推進基本計画」

■この「食育基本法」をもとに「食育推進基本計画」が作成されたわけですね。
 「食育推進基本計画」は、「食育基本法」に基づき、食育を国民運動として計画的・総合的に推進するための施策として平成18年3月に定めたものです。平成18年度から22年度までの5年間に取り組むべき事項をまとめ、基本的な方針として以下の7項目を打ち出しました。

また、食育を推進する関係者・団体が実際に取り組む際に、客観的な目安となる数値目標(表1)と、具体的な施策(表2)を示しました。表2の施策は@〜Bまでは家庭や学校、地域などの”場”としての取り組みです。それを国民運動として盛り上げていくために、各関係者が協力し合って、Cの「食育推進運動」を展開していくことが必要になります。また、Cは、食品関連事業者の協力を得ながら、生産者と消費者の交流を進めていこうというものです。Dの「食文化の継承」というのは、伝統的な日本の食生活の価値を改めて認識し、感謝の心を理解することを主眼としています。Eとしては、「適正な情報の発信」も極めて大切です。現在、食生活に関する情報はいろいろな形で発信されていますが、何が本当に役立つ情報なのか消費者は自分で選択しなければなりません。それを後押しする仕組みを提供していかなければならないと思います。


■メーカーなどの食品事業者に求められるのは、その適切な情報の発信という部分でしょうか。
 そうですね。例えば、健康に良いと言われる食品については、継続して摂取することとなるので安心して長期間食べられるための情報を提供することが必要だと思います。そのためには、その食品の都合の良いことだけでなく、それに付帯する、いわば陰となる情報も伝えてもらいたいですね。人は体調によって摂りすぎが問題になる食品もあるでしょうし、高齢者や子どもは摂取量に気をつけなければならない食品もあるかもしれません。 その場合の情報を適切にお知らせすることが必要です。 また、各事業者が「食育」をキーワードに販売促進を展開することがあるかと思いますが、「この食品を摂取することが食育の最たるものだ」というような表現になると消費者は興ざめしてしまいます。食育の推進となるようにご協力をお願いします。

「食育月間」や「食育の日」を定め標語募集などによってPR

■「食育推進基本計画」の策定から1年経過しましたが、どのような取り組みをされてきましたか。
 昨年3月に基本計画が策定され、6月に「第1回食育推進全国大会」を大阪府と内閣府の共催で大阪市のアジア太平洋トレードセンターで開催しました。このときは1万人を超える方にお越しいただき、食育について理解していただいたのではないかと思います。食育に関する実施状況については、昨年12月に「平成18年版食育白書」として刊行しました。これは内閣府の食育推進のホームページ
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/index.html)でもご覧いただくことができます。
 「食育推進基本計画」をもとに都道府県や市町村がつくる食育推進計画も順調に進んでおり、今年の3月末で半数以上の都道府県が作成されています。また、現在、「食育の周知度」や「食育の関心度」、「食育の国民運動に関する意識」などに関する意識調査を実施しており、その結果は19年度に発表する予定です。

■「食育月間」や「食育の日」も制定されていますね。
 毎年6月を「食育月間」、毎月19日を「食育の日」と定め、政府公報としてテレビCMなどを実施しています。また、昨年は食育月間に向けて標語募集も行い、選ばれた標語(表3)をポスターやパンフレットなどに掲載して広くPRしました。今年は3月1日から23日にかけて再び標語を募集し、その結果は4月末に発表され、6月9日・10日に開催する第2回食育推進全国大会で表彰することになっています。
 今年の食育推進全国大会は、福井県との共催で福井県産業振興施設(サンドーム福井)で開催します。食育に関するシンポジウムや、国、地方公共団体、関係団体などによる食育推進のための展示、体験コーナーなど盛りだくさんの内容となるはずです。これらの見学は無料ですから、ぜひご来場いただきたいと思います。

■19年度に、特に重点的に取り組もうとしている項目はありますか。
 現在、食育推進有識者懇談会を行っており、国民運動としての食育推進を一体的に強く訴えかけていくため、食育推進運動の全国的な展開と関係者の連携・協力をどのように図るかを検討しています。家庭や学校・保育所、食品関連事業者、あるいは地域でそれぞれ何ができるのかを整理し、具体的な内容がまとまり次第、皆さんにお知らせしていきますので、関心を寄せていただきたいですね。

内閣府 食育推進のホームページ
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/index.html

 

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