「食事バランスガイド」を実践に結びつける

奈良 典子 ための取り組みを推進
農林水産省 消費・安全局 消費者情報官補佐 勝野 美江

農林水産省と厚生労働省は、平成12年に決定した「食生活指針」を具体的な行動に結びつけ、望ましい食生活を送る上で、1日に何をどれだけ食べたらよいかを示した「食事バランスガイド」を、昨年6月に作成しました。農林水産省では、この1月にその認知状況などを調査。その結果を踏まえ、現在、「食事バランスガイド」を実践に結びつけるための取り組みを推進しています。初年度の手応えや今年度の取り組みについて、食育推進班担当の勝野さんにお話をうかがいました。

「食事バランスガイド」の認知度は26%


■「食生活指針」や「食事バランスガイド」の、現在の認知状況についてお教えください
「食生活指針」は、国民の健康の増進、生活の質(QOL)の向上、食料の安定供給の確保を図るために、平成12年、当時の文部省、厚生省、農林水産省で共同で決定したもので、10項目から成っています(表1)。以来、毎年、その認知度調査を行っているのですが、平成15年度までは順調に認知度は伸びていたものの、16年度に少し低下してしまい、17年度には再び増加して、全国での認知度は27.3%でした(グラフ1)。
  なかなか思うように「食生活指針」が浸透しないということもあり、これを実践に結びつけるための方策として、昨年、「食事バランスガイド」を作成しました。今年の1月に行った「食生活指針・食育に関する認知度調査」では、この「食事バランスガイド」も加え、認知度や参考度などを調査しましたが、「食事バランスガイド」の認知度は26.0%でした(グラフ2)。この認知度は妥当だという評価と、むしろ高いのではないかという評価もあります。
  私どもがいろいろなところでお話しをさせていただいていると、「食生活指針」より「食事バランスガイド」の方をご存じだという方がたくさんいらっしゃることが多いので、初年度の取り組みとしては成功だったのかなと思います。最近では、お弁当のパッケージやヨーグルトのポスターなどに「食事バランスガイド」を掲載していただくなど、企業に使ってもらう機会が次第に増えています。今年は、店頭で見ていただく機会を増やし、実際の食行動の変化につなげるための取り組みをさらに広げており、その成果が徐々に現れ始めていると感じています。

〔表1〕「食生活指針」の内容
●食事を楽しみましょう
●1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを
●主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを
●ごはんなどの穀類をしっかりと
●野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて
●食塩や脂肪は控えめに
●適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を
●食文化や地域産物を活かし、ときには新しい料理も
●調理や保存を上手にして、無駄や廃棄を少なく
●自分の食生活を見直してみましょう

■調査では、「食事バランスガイドを知る契機となった媒体」についても調べていますね。
  最も多かったものがテレビで、次が新聞でした(グラフ3)。政府公報番組で、検討会メンバーの服部幸應先生に出演していただき、お話しをいただいたり、新聞広告や雑誌広告、地下鉄の車両広告などを掲示したことが功を奏したのではないかと思います。また、スーパーの団体さんの方で自主的に1月にポスターやリーフレットをつくり、それを会員のスーパーに配布していただいたので、買い物に行かれる主婦の方などは店舗でご覧になったのではと思います。

今年度は“実践”に向けての取り組みを展開

■「食事バランスガイド」に対して、今年度はどのようなことを中心に推進されていますか。
  昨年は“認知”していただくことを主眼においた施策を展開したのですが、今年度 は“実践”していただくための取り組みの支援を推進しています(図1)。その取り組みの一つが「食事バランスガイドを活用したモデル的取り組みの推進」です。外食店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどにおけるモデル事業を全国的にバックアップしています。現在のところ、スーパーは全国8社、外食店は大阪と東京の各1社、その他、中食やコンビニエンスストアなどで「食事バランスガイド」を使ったモデル的展開が、この秋から順次スタートしています。これらの企業の多くはモデル店舗だけでなく、全社的に様々な取り組みをしたいという意向が強く、様々な場面でその活動を見ていただけると思います。

■具体的には、どのような取り組みをされるのでしょうか。
  もちろん企業ごとに異なりますが、買い合わせの提案が中心です。主食や主菜ばかりにならないように、「食事バランスガイド」のコマの絵を示しながら、バランスのとれた買い方を提案したり、バランスのよい組み合わせになっている商品をセットで販売したりといったものです。また、スーパーの中にはメーカーとタイアップして、「朝ご飯を食べようキャンペーン」といったイベントを行ったり、「農業体験ツアー」のような形でお客様に農業体験をしていただき、その食材を使って料理教室を開催し、同時に食事バランスガイドの講習も受けていただくというような企画も計画されています。
  また、民間の実践活動に対する支援も行っています。今年の春に公募したところ115件ほどの団体からの応募があり、ここから27件を採択させていただきました。これについては1件400万円を上限に食育の活動に対する助成をしています。これらの活動としては、地域の栄養士会などが「地域版食事バランスガイド」を作成して、親子の食育教室や郷土料理講習会などを開催するといったものや、「食事バランスガイドを意識した献立づくり支援ソフトの開発」など、様々な提案があります。

■その他にも様々な展開を行っておられるようですね。
「米を中心とした日本型食生活の普及・啓発」として、児童・生徒を対象とした稲作体験学習など、従来からの事業を継続するとともに、「多様な媒体等を活用した普及・啓発」ということで、「食事バランスガイド」のポスターやリーフレットを作成し、関東地区と関西地区の中でエリアを限定して配布したり、イベントを実施したり、あるいは車両広告を掲載するなど、日本型食生活の普及・啓発に対する集中的な取り組みを10月頃から行います。この際、リーフレットやポスターを単に配布・掲示するだけでなく、例えば社員食堂や大学生協などで「食事バランスガイド」に即したメニューを出してもらうとか、社員や学生さんとのやりとりを通じた双方向型の取り組みなども考えています。
  その他、シンポジウムやイベントなども適時、全国的に展開しています。一般の方々の目に触れるところにいかに情報を届けるかが課題だと思いますので、体験型の総合展示など、興味を持ってもらえるようなイベントを計画しています。
  また、都道府県への交付金事業として、6月の「食を考える月間」を中心としたイベントの開催や、「食事バランスガイド」の指導、「地域版食事バランスガイド」の作成・普及などの取り組みも支援しています。

「食事バランスガイド」の効果的な活用に期待

■「食事バランスガイド」をさらに浸透させるためには、民間を始めとした様々な活動が大切になりそうですね。
  そうです。押しつけではない、提案型の活動の中から効果的な取り組みが生まれてくるのではないかと思います。おかげさまで食品産業の事業者の中で食育に対する取り組みが非常に盛り上がってきており、皆さん、それぞれ真剣にお考えいただいていますので、今後が楽しみですね。「食事バランスガイド」はあくまでもツールの一つですから、ガイドラインに沿っていれば、独自に改訂することができます。いろいろ工夫していただき、効果的な使い方を考えていただきたいと期待しています。
  農林水産省としては、食文化の継承や、地域の産物を見直すことにもうまくつなげていきたいという思いもありますので、「地域版食事バランスガイド」も大いに支援していきたいですね。例えば徳島県では、地元の産物を中心に、コマの中の料理の絵を差し替えて使っています。民間活動支援の中にもこのような提案がたくさんありますので、うまく食文化の継承に活用していただきたいと思います。
  また、「食事バランスガイド」に即したお弁当を提供する事業者も出てきています。若い女性や高齢者に好評と聞いていますので、このような形でお客様の選択肢が広がることは非常に大切だと思います。

■食生活の中で、自然に「食事バランスガイド」が活用されるといいですね。
  農林水産省では、6月が「食を考える月間」だったこともあり、「食事バランスガイド実践週間」を設けたところ、職員約4,000名が参加し、毎日食生活を「食事バランスガイド」に基いてチェックしました。その結果、主菜を多く摂りすぎている一方、果物や牛乳・乳製品が不足がちの傾向があることがわかりました。まずは自分の食生活の傾向を知り、何が不足しているのか、とり過ぎているのかを自覚することが不可欠だと思います。
  私どもでは日記帳形式で食事のチェックができる「毎日の食生活チェックブック」を作成し、ホームページでも掲載していますので、これもぜひ活用していただけるといいですね。「今日は何が足りていて、何が過剰だったか、何が不足していたか」を楽しみながらチェックしていただきたいと思います。外食店やスーパーを主体としたモデル事業でも、まずは事業に参加する企業の社員の方の食生活を自らチェックしてもらおうという提案も出されています。企業での取り組みを行う前に、まず自ら実践して理解してもらうことで意識づけをしていただくことが大切ではないかと思います。

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